コレクション: Ruska
ルスカ

ルスカはアラビアのデザイナーウラ・プロコッペの代表作です。

「ルスカ」の意味は「紅葉」や「秋色」です。深まりゆく秋に色づく森の木々のようにように深いブラウンで装飾されています。

ルスカは独特の抽薬を使用していて、一つとして同じ風合いはありません。全ての作品が一点ものだと言えます。それぞれに表情が違う焼き上がり具合がルスカの魅力で、個性や温もりのある自分だけの器に出会ったような喜びがあります。

また、非常に硬い素材でできているため、オーブンなどでも使用できる使い勝手の良い点も人気の理由のひとつです。

ルスカは日本でとても人気がある北欧ヴィンテージ食器です。

ルスカについて

様々なフォルムのルスカ

ルスカのラインナップ

アラビアのカタログに掲載されているルスカは約30種類ですが、実際には40種類以上が存在していると言われています。めずらしいフォルムの製品を探すのも楽しいかもしれませんね。

カップ&ソーサー

カップ&ソーサーのラインナップは、ティー、コーヒー、デミタス、エスプレッソ、マグ、ビアマグ、モーニングなどがあります。このうち、コーヒーやマグが人気です。特に「Dハンドル」と言われる持ち手の部分がアルファベットのDのような形のマグは人気があります。手になじんで持ちやすいのと、生産数が少ないのが理由です。

ティータイム関連

ティーポット、コーヒーポット、ピッチャー、シュガーポット、クリーマーがあります。クリーマーは大中小の3種類があります。

ソーサー&ボウル

ソーサーは16cm、17cm、18cm、20cm、24cm、26cmなど用途に応じて豊富なラインナップがあります。円形だけでなく、長方形のプレートも存在します。その他、スーププレート、ボウルも複数がライナップされています。

その他

エッグカップ、スープチューリン、キャセロール、スパイスポット、ナプキンリング、灰皿などがあります。めずらしいところでは、20周年記念で制作されたフラワーベースなどがあります。

ルスカの歴史

ルスカをデザインしたウラ・プロコッペは1954年に絵付師としてアラビア社に入社しました。その後、カイ・フランクによってデザイナーチームに抜擢されました。それから1966年までアラビアに在籍していました(その後残念ながら1968年に若くして亡くなりました)。ルスカの発売が1961年からなので、キャリアの中頃の作品と言えます。

ウラ・プロコッペはルスカのために「Sモデル」と言われる日常で使える、丈夫で手に馴染むフォルムをデザインしました。その後Sモデルはアネモネロスマリンメリウートゥアコスモスコーラリフェニカ、フローラなど30を超える多くのシリーズに採用されましたが、原点はルスカです。

ルスカは、まず1961年のミラノトリエンナーレで発表され、その後販売が開始されました。以降、2000年頃まで約40年間に渡って製造販売されました。フィンランドの家庭に数多く普及したため、現存数も多く、比較的に手に入りやすいヴィンテージ食器でもあります。安くて手に入りやすいのもルスカが人気の理由のひとつと言えます。

ルスカの材質について

ルスカを含むアラビアのSモデルは陶器と磁器の中間にあたる炻器(せっき)という材質でできています。ヨーロッパではストーンウェアと呼ばれるものです。

Sモデルはオーブンでの使用を可能にするべく、開発されました。炻器でも肉厚でしっかりとした仕上げになっていて、熱に強く、丈夫で割れにくい特徴があります。これによってオーブンに直接入れることが可能となりました。また料理や飲み物が冷めにくい特徴があります。

オーブンで調理する場合、出来上がった料理をお皿に移し替えなければならなかったのですが、ルスカの登場によりお皿を直接オーブンに入れることができるようになりました。これは、主婦たちにとっては画期的なことで、驚異的なロングセラー商品となりました。

また、ルスカの独特な表面は、鉄粉をマットな釉薬に塗り付けることにより生み出されます。赤みがあったり、黒っぽくなったり様々な表情がありますが、これは鉄分の酸化度合いによるものかもしれません。

ルスカは釉薬をかけるだけのシンプルなデザイン工程なので、大量生産に向いていました。すると値段も下がるので、それがフィンランドの家庭に普及した理由のひとつかもしれません。先のオーブン対応とあいまって、ルスカはアラビアで最も売れたシリーズとなりました。

ルスカのバックスタンプ(刻印)について

ルスカのヴィンテージにはバックスタンプがあるものとないものが存在します。当サイトでも両方を販売しています。

なぜ、バックスタンプがあるものとないものが存在するのでしょうか?その理由はさだかではありません。バックスタンプがないものの存在については、2つの理由が考えられます。

ひとつはもともとバックスタンプがあったのに、長年の使用で消えてしまったということです。ルスカのバックスタンプはコールドスタンプ方式(cold-stamped)と呼ばれ、釉薬の上から押されたものです。釉薬でカバーされたり、彫られているわけではないため、剥がれやすく、強くこすると落ちてしまいます。また、北欧では食洗機が普及しています。食洗機は高温のお湯と洗浄力の強い洗剤を使いますが、これによってバックスタンプが落ちてしまった可能性が考えられます。

消えかけたバックスタンプ

(ソーサーのバックスタンプ比較。右は消えかかっています。)

そしてもうひとつの理由として考えられるのが、最初からバックスタンプが付いていないという可能性です。40年に渡って製造されているので、ロットによっては何らかの理由でスタンプが押されなかったということも考えられます。ルスカ以外のシリーズでも形状はまったく同じなのに、なぜかバックスタンプのないヴィンテージ品が存在します。

あくまで推測ですが、バックスタンプの有無については上記の2つが考えられます。ヴィンテージとしては、やはりバックスタンプがある方が好まれるので、バックスタンプありのほうが需要があり、値段も若干高めになっています。

ルスカの製造年について

ルスカは長期に渡って製造されていたので、初期のものと終盤のものとでは約40年の開きがあります。ルスカの製造年を特定する方法はあるのでしょうか?

手がかりになるのはバックスタンプです。ARABIAのバックスタンプは時々変更されます。これによってある程度、製造年代を知ることができます。

下の画像はルスカが製造されていたころのARABIAのロゴです。もしバックスタンプが残っていれば、この情報をもとにある程度特定できそうです。

所有しているルスカや購入予定のルスカが、いつごろ作られたか調べてみるのも楽しそうですね。ちなみに上の消えかかっているバックスタンプの画像のルスカは1971-1975年のもののようです。

ルスカが製造されていたころのアラビアのバックスタンプ

(画像はARABIA社の公式サイトより抜粋・加工)

ルスカと似ているヴィンテージ食器

ルスカにはブラウンの他に青みがかった「ブルールスカ」と、緑がかった「グリーンルスカ」が存在します。この2つはルスカの製造が始まって間もない1962-63年の間に製造されました。詳細は不明ですが、テストカラーとして試験的に製造・販売されたようです。生産数が少ないため、希少なヴィンテージ食器としてコレクターの間で人気があります。

また、1980年代にはバルト海の海の色をイメージした「バルティックシー」が製造されました。美しい海を表現したようなブルーが印象的なシリーズです。ブルールスカと似ていますが、プレートの中央の部分に釉薬がかかっているのが特徴です。

その他、ルスカと似ているシリーズに、インケリ・レイヴォがデザインしたアラビアのKRモデルがあります。深みのあるブラウンが一瞬ルスカかな?と思ってしまうくらいそっくりです。KRモデルはルスカに比べて色が濃くて落ち着いていて、表面がツルツルしているのが特徴です。

もうひとつはノルウェー・ポシュグルン社のLAVA/ラヴァです。こちらはルスカよりももっと荒々しい感じで間違うことはありませんが、一点一点の違いが大きく、個性がある点が似ています。

ルスカのお手入れについて

ルスカは貴重なヴィンテージで、すべてが異なる1点ものなので、できれば手洗いが望ましいです。しかし丈夫で割れにくく、食洗機にも対応しているので、お手入れについてはそれほど気にする必要はないかもしれません。ただ、バックスタンプは強くこすったり、何度も食洗機に入れていると落ちてしまうので注意が必要です。

ルスカの使い勝手について

ルスカは落ち着いたデザインで料理を引き立てます。和洋中どの料理にも合います。日本の侘び寂びに通じるものがあるので、日本食にもよく合います。以前に行った料理屋さんでルスカのプレートで焼き魚を提供してもらったことがあるのですが、和食器かと思うくらいにマッチしていてびっくりしたことがあります。

ただし色の濃い黒っぽい料理だと、沈んでしまう可能性があるので、彩りに工夫が必要です。

まとめ

ルスカは丈夫で割れにくくオーブン、電子レンジ、食洗機にも対応しているので、普段使いができます。使い勝手がよく、数が多く値段も手頃で手に入れやすいので、ヴィンテージ食器の入門におすすめなシリーズです。

ルスカはひとつひとつの表情が異なり個性があります。あなただけの、世界に1つだけのルスカを日々の暮らしのお供にしてみてはいかがでしょうか。